2023年10月21日-10月22日
堀江ピアノ教室
国宝高岡山瑞龍寺 大庫裏
(〒933-0863富山県高岡市関本町35)
「ピアノゼン」開催前日は、北陸の秋らしく、ひやりと湿った曇り空でした。
富山県第二の都市、高岡市。国宝「高岡山瑞龍寺」の砂利の音をかきわけながら、黒とベージュに彩られたシックなトラックが到着しました。
ピアノを学び楽しむ私たちのヒーロー、かてぃんさんのアップライトピアノです。
お寺の裏手のほうにある重々しい扉から、大切に梱包されたかてぃんピアノがゆっくりと運び込まれました。建立1663年の瑞龍寺とかてぃんピアノは、どこかその歴史とピアノの歴史とをなぞり合うように、しっくりと馴染んでいました。
今回のアップライトプロジェクトのコンセプトは、Piano for Myself。
だれかに披露するためにピアノを弾くのではなく、自分の中にもぐりこんで、自分と会話するように、自分のためだけにピアノの音をつむぐ。
憧れの角野隼斗さんが、ご自身のピアノをこんな思いで、全国に届けてくださるなんて。この企画を目にしたときの高揚感と、どこか心を護られているような不思議な包容力に満ちた感動は、今でもありありと思い出すことができます。
ピアノを設置させていただくのは、富山県を代表する国宝、瑞龍寺。その長い長い歴史の中で、たくさんの人が祈りを捧げ、座禅を通じて「自分と向かい合う」ことがおこなわれてきた場所です。
その特別な空間と、Piano for Myselfを掲げた角野さんのピアノとを結びつけることは、地元でピアノとともに生きる、私たちの夢の実現のようにも思えました。
前日の会場設営が終わるころには、もう日が落ちていました。
会場となる瑞龍寺「大庫裏(おおくり)」は、建立当時は台所として使用されていた場所。
分厚い木の扉に覆われた畳の広間はちょうど「座禅堂」の正面に位置し、瞑想には最適の空間だとか。
高い高い天井と漆喰の壁は音響にも優れています。
瑞龍寺さんのご厚意により、通常夜間は閉まっているお寺を特別にライトアップしていただきました。
静かに光を放つ大迫力の建造物に囲まれ、19時半からはピアノゼン前夜祭。
招致アーティストによるインスタライブを行いました。
パフォーマンスは、地元出身の19歳ピアニストこーやと、ダンスアーティストmionの二人。
国宝瑞龍寺とかてぃんピアノの力を借りた特別なイベントが、幻想的に幕を開けました。
いよいよ迎えた「ピアノゼン」開催初日は、雨となりました。
お寺の中はしっとりと冷気をはらんでいましたが、強力なストーブとかてぃんさんの思いの宿ったピアノの力で、会場は熱気に包まれていきました。
ピアノの背面には、PIANOZENのロゴを冠した“のぼり”を吊るしてみました。
会場のあちこちには、地元高岡市の企業「株式会社能作」さんのご協力により、美しい花器を置かせていただきました。
まずはこけら落としとして、ピアニストのこーやがご挨拶。
かてぃんさんへの憧れと今回の企画への思いをトークと演奏に込め、ご来場の皆さんにお聴きいただきました。曲目は「地球儀」「海の幽霊」「花は咲く」など、全てかてぃんさんへのリスペクトプログラム。
会場では、瑞龍寺「座禅堂」での座禅で実際に使用されている座布(座禅用の丸い座布団)を置き、お香を焚きました。
お香は一般的なものより太く角ばっていて、燃え尽きるまでの約45分間は、座禅の一区切りの時間とされてきたそうです。
甘く燻された香りに包まれて、ゆったりとした時間が流れていきました。
演奏中は、自分と向き合う時間にしていただくべく、広間の分厚い扉は締め切り。
演奏終了の合図は、空間を清めて邪気を払うとされる「おりん」(株式会社能作製)でお知らせしました。
演奏中の様子は、スタッフも漏れ聴こえてくるピアノの音でしか窺い知ることができなかったのですが、許可をいただいて撮影したものをご紹介します。
演奏後には、角野さんへのメッセージカードを書くスペースをご用意。
カードのご記入は任意でしたが、皆さんがメッセージを寄せてくださっていました。
どこか心が解放される思いからか、書きながら涙があふれてしまう方も。
2日目は快晴。
瑞龍寺の建物に光が燦燦と差し込んでいました。
ご家族連れも多く、にぎやかな時間も。
こうして2日間で70組、5歳のお子様から20代の大学生の方、お仕事盛りの30代~70代の大人の方まで、地元の方はもとより北海道や関東、関西、三重からもご参加いただきました。
印象深かったのは、演奏後の皆さんの表情です。
あたたかく上気した笑顔で、まるで温泉にでも出かけたあとのような様子。
初めてお会いする私たちスタッフにも親密に言葉をかけてくださる方ばかりで、角野さんを介して、ピアノを通じての出会いに、胸が熱くなる瞬間の連続でした。
そして、お申し込みくださった半数以上は、20歳以上の大人の方たちでした。
アップライトピアノ・プロジェクトの軸として「子どもたちに、音楽をつなぐ」という言葉がありますが、このピアノゼンにおいては子どもたちだけでなく、かつて子どもだった私たち大人にまで、音楽をつないでいてくれていたかもしれません。
禅寺の、分厚い扉が閉められた空間に、自分とピアノだけ。
そのピアノの向こうには、確かに角野さんの存在があって、どんなふうに弾いてもいい、自分との時間を大切に、と、背中を押してくれている。
いろんな「だれかのため」に懸命に生きる大人の方にこそ、この特別なピアノの力が伝わり、自分を赦すための音になって、響いていったようにも思えました。
イベントを終え、数日は余韻が抜けきらず、その音の感触が脳内に響いていました。
そして思いがけず、参加者の方からメールやお電話もいただいて、余韻を共有し涙ぐむひとときも。
そんな濃厚な、笑いあり涙ありの、ピアノゼンの日々。
ピアノゼンに関わってくださったすべての方々に、心から感謝申し上げます。
- 【富山県 女性】
素晴らしい企画に参加できて、とても光栄に思います。
私はピアノ教室には入ってなくて、YouTubeでCateenさんを見て、ファンになり、電子ピアノを購入して楽しむ程度です。しかも本物のピアノにあまり触れたことがなく、他の参加者さんたちの素晴らしい演奏が響きわたっているし、ドキドキしながら、そっとピアノに触れたとき、あまりの響きに躊躇してしまいました。失敗して頭真っ白に!でも、PIANOZEN あの空間はとても優しく、静かに受け入れてくださってとても嬉しく出会えたことを感謝します。
ライブも近くで見られて、踊りとピアノの一体感に感動しました。
改めて、素晴らしい企画に感謝します。幸せの空間をありがとうございました。 - 【北海道 女性】
今回のプロジェクトに参加させて頂いて感謝です♪
私たち参加者には想像も出来ないほどの数々のご苦労がきっと有りましたよね。
本当にありがとうございました。
そしてお疲れ様でした。
あのピアノは無事に次の開催地へ旅だったのですね。
また新たな場所で音楽を通して人々に感動や癒しや希望や夢や形なきものでしか表せない自由な世界をあのピアノが繋いでいってくれると良いですね♪ 私もあの場所であのピアノで皆様と出会えて本当に楽しかったです♪
今日もまた練習をします。また何処かで皆様に出会えるかもしれないので!
その時はまたよろしくお願いします。
追伸
北海道に戻った今も耳に残るあの遠くで優しく響く「おりん」の音が聞きたくなります。
私たちはもしかしたら「音」であの日あの時の記憶を思い出せるのかもしれませんね♪
「おりん」の演出はお見事です♪ - 【富山県 男性】
本日は、大変貴重な機会を頂きまして、ありがとうございました。
こーやさんの演奏を聴いたりお話したりすることもできて、私にとって有意義でとても素晴らしい時間となりました。重ねて御礼申し上げます。
本日のPIANOZENを通して、改めて音楽の素晴らしさを実感することができました。
就職のため来年春には富山を離れるのですが、あと半年ほどの間、この大好きな
富山の地で音楽に沢山触れて、その楽しさを多くの方と共有したいと思うきっかけにもなりました。
また何かの機会がございましたら、その時はどうぞよろしくお願い致します。
改めまして、本日は貴重な時間を過ごさせていただき、ありがとうございました。
「ざぜんのように、ひく」—新しいピアノ演奏のかたち―
富山県を代表する国宝・瑞龍寺は、江戸時代初期に建立された、「座禅」の教えを根幹とする曹洞宗のお寺です。この瑞龍寺に、角野隼斗さんが2023年の全国ツアーで使用された特別なアップライトピアノを、設置させていだたくことになりました。
「自分と対話するように演奏する」 — 今回のアップライトピアノプロジェクトの根底にあるテーマには、「姿勢を正し、静かに自分の心と向かい合う」座禅に通じるところがあるように思います。
多くの人々が座禅を通じて自分の心と向き合ってきた特別な場所・瑞龍寺で、角野さんのアップライトピアノと特別な時間をお過ごしください。
観客席は設けず、おひとりで静かに集中できる空間をご用意します。演奏会ではありませんので、未完成な曲でもうまく弾けない曲でも大丈夫です。
座禅を組むように、ピアノに触れ、自分と向き合ってみませんか。
演奏申込:「ピアノゼン」特設サイトよりお申し込みください
https://horie-piano.jp/pianozen/
*瑞龍寺拝観料が別途必要となります
*当会場では、演奏にあたりピアノ運搬費用の一部(2000円程度)を演奏者の方にご負担いただく場合があります
観覧のみ:観覧は自由です
*瑞龍寺拝観料が別途必要となります
メールアドレス:horiepiano@gmail.com